2017.07.30照明プロダクトをつくる周辺とそれから part 2

メーカー(依頼者、企画者、販売者) と つくり手、そしてそこに関わる人たちには「本気」と「根気」が要るということをトークで話しました。その本気かどうかで、根気があるかどうかがわかります。

つくろうとしているものが、必要なのかどうか、必要とされるものかどうかを考えます。そこでリサーチやマーケティングなどに走るのではなく(そもそもその時間さえももったいない)自分たちがほしいものをつくるという気持ちを関わる人たちと共有します。その確信が本気度に繋がると思うのです。あとは根気よくコツコツとプロジェクトを進めていくのですが、一番最後まで温度をキープするべきはメーカーの立場。出来上がるプロダクトの完成形を常にイメージして、打ち合わせのときひとつとっても、売るときのシチュエーションや売り方の方法を念頭におきながら臨んでほしいと思うわけです。特に照明は、空間でどのように見えてくるかがキモ。大きいものでも小さいものでも、空間に影響を与えるものが照明だから。プロダクト単体でとらえるのではなく、空間の視点で考えるべきものであるとはトークの時に何度も連発した言葉。デザインする人がメーカー側にいても、外部の人でも、空間の視点をもっていないと致命的だと思っています。

つくり手側を本気にさせることも大切なこと。つくり手が同じメーカー内の開発者、開発部門だとしても同じですね。以前、アクシスのウェブ連載ルイスポールセンのデスクランプを取材したことがありました。デザインはnendoの佐藤オオキさん。取材でnendoのオフィスを訪れ佐藤さんに話を聞いていた中で印象的だったことがあります。ルイスポールセンはこれまでデスクランプのようなタスクライトを商品化したことがありませんでした。まず、徹底的に研究したのは、世界的に知られているデスクランプでもあるアルテミデトロメオだったそうです。佐藤さんが何度かルイスポールセンの開発部門に行った時、所狭しとトロメオを細部にわたり分解した部材が壁から床ま並べてあったとのこと。その執念に驚いたと言っていました。”敵を知る”とは言いますが、世界的に認知度があるメーカーは実績と信用があるがゆえに中途半端なものはつくれません。有名デザイナーによるものだとしても、少しの妥協は許されず、つくり手である開発者のプライドをかけた本気の勝負なのです。佐藤さんも多忙極めるデザイナーですから世界中を飛び回ってるため、メーカーとの打ち合わせの時間を捻出するのも簡単ではないわけですが、それでもメーカー側はデザイナーとの擦り合わせや開発プロセスの上での確認はしていかなければいけません。ルイスポールセンの開発チームは、佐藤さんがなんとか時間がつくれるのが東京からイタリアに移動するためにデンマークでトランジットするときの時間のみという時、トランジットする空港のラウンジまで行くため、出国手続きまでし試作を持って向かったそう。ただ打ち合わせをするためだけのために。そんな中から生まれたのが、NJP tableなのです。
できること、できないこと、できないならばどうすればできる可能性が生まれるか、または別の方法はあるのかどうかなど、決めていかなければならないことは多々あり、一貫しているのは積極的に”出来る”という確信に向かうこと。私は、ずっとこの”できる”と”できない”のうちの、”できない”を打ち消す過程が重要だと思ってきました。世界的に有名とされる老舗照明メーカーの開発プロセスを知ると、開発者の情熱が必ずあることに気づきます。熱くなる気持ちは、デザイナーやつくり手を巻き込む力になります。しかし、熱くなるだけではその周辺の人たちをプロジェクトが完成するまで導くことはできません。大事なのは、”出来ない”を”出来る”に変換するポジティブな思考と、完成してから売るためにどうしていくかというイメージを持ち続けることなのだと思います。


▲ アルテミデのトロメオ
建築家ミケーレ・デ・ルッキのデザインによる名作。機能のレベルが高く、機能があってデザインが秀逸というプロダクトの筆頭。いったいこの照明はこれまでどれだけ売れているのだろう ? とにかく、空間の中での佇まいや使う時の心地よさは素晴らしい商品だと思います。nend 佐藤オオキのデザインNJP tableはこれを超えることができるのかはわかりませんが、ルイスポールセンの開発チームの執念と情熱はすごいと思いました。

2017.07.27照明プロダクトをつくる周辺とそれから part 1

先月、6月にインテリアライフスタイル(IFFT)の企画の中で、トークをしてきました。
テーマは「デザイン照明器具の新しいトライアル」
メーカー勤務のときの経験からと独立してから見えてきた、ものづくりへの考え方や思いがありました。ですので、これからどんなスタイルや立場で照明のプロダクトをつくっていくのが理想かを提案し、話しながらも自分自身に問いかけていたような気がします。
照明以外のプロダクトにも共通することはもちろんあり、ものつくりということの根本を問いただす思いもあって、トークの資料をつくり臨みました。
ちょうど、去年からタイムアンドスタイルさんの照明プロダクトの製造ディレクションをやっていて、このIFFTのタイムアンドスタイルのブースでプロトタイプを発表していたタイミングでもありました。

このようなプロジェクトには、企画・販売する側(依頼者) 、製造する側(メーカー、その他) があって。その双方だけでスムーズに工程が進む場合と、なかなか難しく困難にぶち当たる場合があるというのを前提に、どのようなスタイルが理想的かということを話しました。
私は、時々、紹介をしてほしいと頼まれることがあります。「◯◯を作っているところを紹介して欲しい」「◯◯さんを紹介してほしい」「◯◯の工場を紹介してほしい」など。ある方にアドバイスを受けた時から、紹介だけはしないことにしました。「必ず、間に入ること。これが大事」なのだと確信したからです。お互いの分野をよく知る同士ならば問題ないと思います。しかし、よく知らないから紹介してほしいと聞いてくるのだと思うし、一度紹介だけをしてその後プロジェクトが進まなくなったというケースもありましたから。間に入ったから必ずうまくいくとも限らないのだけれど、入るなら入るで覚悟をもって臨むべきだと感じています。

トークでは、関わった立場の人間はディレクターでもデザイナーでも最終的に出来たものがエンドユーザーに届くところまで意識するべき、プロダクトがシーンや空間でどのように見えてくるかを捉えるべきということを強調しました。でも、聞いている側の人たちは、きっと自分の立場におきかえ都合の良いように理解して聞いていたか、ただ初めて聞く内容に面食らっていたか。。いや、それとも自分は伝えたつもりが、伝わってなかったのか。そんな気がしたのは、その後に訪れたいろんなことがあったからです。私も、初めてそのような場を経験したので、新鮮でもあり考えさせられたことでもありました。

長い間、人気商品として愛される照明プロダクトには、やはり理由があります。

◯デザイナーとメーカーとの間で繰り広げられた、妥協のない開発ストーリー。
◯自社の商品として、「売る」ということに責任とプライドを持ち強い思いを注ぐメーカーの情熱がある。
◯自信をもって提供できる、クオリティの高さ。
◯市場に受け入れられる価格設定。
◯空間の中に機能とデザインが自然と溶け込んでいる。

著名デザイナーによるものであれば、注目度も高いし、メディアもこぞって取り上げるでしょう。
商品として出来上がるまでについても、つくる側も依頼者側も、デザイナーの持つ力によってある程度のクオリティまで仕上げることは難しくないかもしれません。費用もそれなりにかかることも覚悟していれば。
依頼者、販売するブランドおよびメーカーはその後その商品をずっと売り続けるための努力が必要になります。売り続けるということは、時代を超えて愛される商品にしていくという努力でもあり、決して打ち上げ花火で終わってはいけない。売れなくなってきたとき、決してデザインやデザイナー、製作に関わった人たちのせいや市場のせいにもしてはいけないし、とにかく何かのせいにしてはいけない。なので、著名デザイナーのものであろうと無名な若手デザイナーのものであろうと、売るほうにとっては、ただひとつ「うちの大事な商品」ということ以外、それを超える理由は無いと思うのです。愛されづつける理由、すべてに最初は当てはまらないとしても、売る側が商品を育てていくための努力をしていくことによって最終的にタイムレスな売れ続けるものになっていくのではないでしょうか。
オリジナル商品をつくることについてはもちろんのこと、セレクト商品を売る場合でも同じだと思います。

part2に続く。


▲ FLOS GLO-BALL シーリングタイプ。デザイナーはジャスパー・モリソン。
FLOSの中でも群を抜いて売れ続けている照明プロダクト。FLOSのトップであるピエロ・ガンディーニは、相手がジャスパー・モリソンであろうと、メーカーとして売る側の強い意思を貫いたというストーリーがあります。

2017.07.01照明と食のリンクLIGHT & DISHES はじめます

20年ちょっとの間、照明器具のメーカーで働いていました。
そして、数年前に独立し、かねてからずっと自分の心の中にあったフレーズ「LIGHT & DISHES」を体現する場、飲食店 たにたや(tanitaya.com) を開店しました。
これまで生きてきた中で、自分が一番貪欲に偏愛してきた「食」。
仕事として出会った「照明」の世界。メーカー勤務の中、個人的に好きで興味が深い食の世界は、照明の仕事を通して不思議にも様々なシチュエーションを引き寄せてくれました。尊敬と憧れの対象だったレストランの照明計画に携われる経験から多くのことを学び、自分が向かうべき方向を自然に示してくれたのかもしれません。
たにたやを始めて、照明は食を囲む空間に大きな影響を与えることを、来店された多くの人たちを通して、改めて強く感じました。
食がつくる空気、空間、人に対して、もっと照明ができることがあるはず。という確信が生まれたのが事実です。
自分がセレクトした照明、自分が企画して製作するLIGHT & DISHES ブランドのオリジナル照明を、具体的に必要とされる状況と、心地よく過ごせる使いかたと一緒に提案していきたいと思っています。
飲食店 たにたやと一緒にどうぞお付き合いください。
こちらでは、デザインに関することや、コラムを連載しているウェブマガジン AXISモダンリビングのゲストコラムの連載、二つのデザイン媒体での取材を通して感じたことなども書いていきたいと思っています。


(写真) VL45 ラジオハウスペンダント / ルイスポールセン
photo by : Hiroe TANITA